イオン交換の解説
栗田工業/KCRセンターの小川です。№4の水処理教室では、「イオン交換」についてお話いたします。純水の製造で水中の塩類成分を取り除くイオン交換樹脂は、直径約0.5mmの大きさで、たらこや数の子のような形をしています。色は褐色、黄色、白色など様々です。このイオン交換樹脂を使用して純水に処理する方法を解説いたします。
解説
純水の製造では水中のカルシウム、ナトリウム、塩化物などの塩類成分を取り除く必要があります。これらの成分は、水中に溶けてプラスやマイナスに帯電しています。この帯電した物質をイオンとよび、カルシウムイオン(Ca2+)、ナトリウムイオン(Na+)、塩化物イオン(Cl–)などといいます。これら水中のイオンを取り除くときに利用されるのが、自らが持つイオンを水中に出して、代わりに水中に存在する他のイオンと交換する性質を持ったイオン交換体です。多孔性の合成樹脂でつくったイオン交換体をイオン交換樹脂といいます。
イオン交換の原理
イオン交換樹脂は、直径約0.5mm程度の球状であり、ちょうど魚の卵、たとえば、たらこ、数の子のような外観をしています。色は褐色、黄色、白色、黒色など様々で、やや透明なものから不透明なものまであります。イオン交換樹脂には、陽イオン(プラスイオン)を交換する陽イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂)と、陰イオン(マイナスイオン)を交換する陰イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂)があります。これらの2種類の樹脂を単独で利用したり、混合して利用します。(ミックス樹脂と呼びます)イオン交換樹脂を使用して、塩水(NaCl)を純水に処理する手順を模式図で示します。カチオン交換樹脂ではNa+を取りこんでH+を排出します。アニオン交換樹脂ではCl-を取り込んでOH-を排出します。これらの放出されたH+とOH-は結合して水(純水)になるため、イオンは残りません。

イオン交換装置デミエース
最も簡単なイオン交換装置の構造を示します。FRP製やステンレス製の容器に、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合して詰めたもので、栗田工業ではデミエースという商品名で呼んでいます。樹脂充填層の上部から流入した原水がイオン交換樹脂層を通過して純水となります。イオン交換樹脂が全て原水中のイオンとイオン交換してしまうと、原水中のイオンがイオン交換樹脂で交換しきれずに処理水にリークし(漏れ)はじめ、処理水質が悪化します。この場合は、イオン交換樹脂の再生が必要になります。デミエースの場合、再生が必要となった樹脂を容器ごと再生工場に返送し、工場で容器内の樹脂を新しいイオン交換樹脂に詰め替えて再度使用します。デミエースは現場で薬品再生しないため、手軽に使える点が特徴です。使用水量が多いと詰め替え頻度が高くなるため、前にRO膜[逆浸透膜]を設置して原水のイオン量を減らして使用します。

イオン交換樹脂利用の注意事項
(1)水道水を処理する時、水道水中の残留塩素がイオン交換樹脂を劣化させるため、イオン交換樹脂の前に活性炭(カーボンフィルター等)を設置し、残留塩素を除去します。活性炭の寿命は0.5~2年で、定期的な交換が必要です。
(2)濁質が多いとイオン交換樹脂処理水の水質が低下します。井戸水などを処理するときは、前処理フィルターを取り付ける必要があります。
イオン交換樹脂のその他の用途
イオン交換樹脂は純水を作る以外に、特定の成分を除去することにも利用されています。その用途例を示します。
<用途例>
・井戸水中の硬度成分除去
・自然水中の硝酸除去
・特定重金属の除去