逆浸透現象を利用したRO膜
用水・純水 純水・超純水容器内の液体と周りの液体との濃度が違い、薄いほうから濃いほうへ水が膜を通過して移動する現象を正浸透現象といいます。
この場合と逆方向に水を流す、逆浸透現象を応用して作ったRO膜(逆浸透膜)について解説します。
RO膜ができるきっかけとなった半透膜とは
RO膜(逆浸透膜)の説明をする前に、まず半透膜のお話をしましょう。
ガラスや金属あるいはプラスチックなど液体を入れる容器が手に入らなかった時代、ヨーロッパではその容器としてブタや羊の膀胱が用いられていました。そして、この容器にワインや塩水を入れて水中に放置すると、容器内の液量が増すことが当時から知られていました。これを科学的に調査し、半透膜として説明がなされたのは19世紀末のことです。
ワインや塩水の液量が増えるのは、容器内の液体と周りの液体との濃度が違うため、薄いほうから濃いほうへ水が膜を通過して移動した結果によるものです。
超純水製造にも使われるRO膜
半透膜をはさんで塩水と真水を入れておくと、真水が塩水側へ膜を介して移動し、両サイドで水位差(浸透圧)が生じます。ところが、塩水側にこの浸透圧以上の圧力をかけると、今度は塩水側から真水側へ水が移動する逆浸透現象が生じます。この機能を水処理に応用したのがRO膜(逆浸透膜)です。
以前は、海水やかん水を脱塩して真水(淡水)にすることが主体でしたが、最近では超純水製造システム、排水回収分野へとその用途は拡大してきています。

RO膜の材質や構造
最初に安定した高分子膜でRO膜を実用化したのは、1950年以降のアメリカにおいてでした。最初に実用化されたRO膜は酢酸セルロースでつくられたものでしたが、現在ではポリアミド系複合膜を用いて、圧力0.75~1.5MPaで運転する形が主流となってきています。
RO膜の孔は、電子顕微鏡でも見ることのできないレベルで非多孔膜と呼ばれています。ただ孔というよりは、膜を構成している高分子間のすき間を水が通ると考えるほうが正しいでしょう。使用される膜の形式は、スパイラル型や中空糸膜方式が実用化されています。

用語解説
非多孔膜
気体分子や無機イオンなどの低分子の物質が透過できる細孔径(数nm以下)を有する膜である。
CHECK POINT!
- 逆浸透現象を水処理に応用した逆浸透膜がRO膜[逆浸透膜]です。
- 海水を真水にする以外に、超純水製造システムなどにも利用されています。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
KCRセンター
池上徹