シアン処理で代表的なアルカリ塩素法
排水 凝集分離栗田工業/KCRセンターの佐藤です。№36の水処理教室では、「シアン処理で代表的なアルカリ塩素法」についてお話いたします。メッキなどに使われるシアンは猛毒、劇物のイメージが定着しており、環境基準以下の自主規制を設定して排水している事業所がほとんどです。その処理方法として最も古くからあるアルカリ塩素法について解説いたします。
解説
メッキなどに使われるシアンは毒性が強い物質です。その致死量はKCNの化合物(シアン化カリウム:青酸カリ)では約200mgと言われています。したがってシアンを含む排水には環境基準値で0.1mg/L未満、排水基準値は1mg/L以下という厳しい水質基準値が適用されてきます。ただし排水基準値は1mg/L以下ですが、猛毒、劇物のイメージが定着していることもあり、シアンを排出する事業者は自主規制によって環境基準、あるいはそれ以下の基準値を設定して排水するのが普通です。そのためそれぞれの工場で、他の排水とは区別して独自の設備で処理されます。シアン含有排水は、一般的にアルカリ塩素法で処理されますが、アルカリ塩素法では処理できないシアン化合物が存在することが処理を複雑にしています。ここではまず、シアン含有処理技術として最も古くからあり、現在でも代表的な処理技術となっているアルカリ塩素法を紹介します。
二段階で分解するアルカリ塩素法
シアンはC(炭素)とN(窒素)の化合物であるため、最終的にはCO2やN2の形にして分解することができます。そのためシアンの分解は酸化反応で行われ、酸化剤には次亜塩素酸ソーダが使用されます。その反応は、すべての段階で塩素が作用してCN–→CNCl→CNO–→CO2+N2となります。この中でCN–→CNCl(塩化シアン)の反応はpH値に関係なく進行します。CNClはシアンの1/10程度の毒性をもつ揮発性の物質で、中性では安定していますが、アルカリ性では加水分解してCNO–(シアン酸)になります。一方CN–は中性でなければ分解できません。このためアルカリ塩素処理法では、シアンをCO2(二酸化炭素)やN2(窒素ガス)まで分解するのに二段分解が適用され、最終的には無毒化されます。

用語解説
加水分解
化合物(塩類)が、水と反応して酸と塩基に分解される現象のこと。
CHECK POINT!
- 毒性の強いシアンは、アルカリ塩素法で処理します。
- シアンは、二酸化炭素と窒素ガスに分解して無毒化されます。
出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)
解説者
栗田工業株式会社
KCRセンター
佐藤禎一