No.037

微生物の働きで窒素化合物を除去する生物脱窒法

排水 生物処理

栗田工業/KCRセンターの池上です。№37の水処理教室では、「微生物の働きで窒素化合物を除去する生物脱窒法」についてお話いたします。好気性微生物と通性嫌気微生物を組み合わせた生物脱窒法は、排水中の窒素化合物と炭素化合物を同時に分解する方法で、窒素化合物は窒素ガスまで分解されます。その分解工程をくわしく解説いたします。

解説

好気性微生物による活性汚泥法は、基本的に有機物中の炭素化合物を分解する方法です。好気性微生物と通性嫌気性微生物を組み合わせて行う生物脱窒法は、排水中の窒素化合物(アンモニア)と炭素化合物を同時に分解する方法で、窒素化合物は窒素ガスまで分解されます。生物脱窒反応は、硝化工程と脱窒工程に分割されます。このうち硝化工程は、排水中のアンモニア(NH4)を亜硝酸(NO2)経由で硝酸(NO3)まで酸化する反応です。そしてここに関与する微生物が硝化細菌で、これらは反応槽内に十分な溶存酸素の存在が絶対条件となる好気性細菌です。この硝化細菌は、アンモニアを亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌と亜硝酸から硝酸に酸化する亜硝酸酸化細菌に分けられます。また一般的な活性汚泥中に生育している細菌の多くは、有機物の炭素源をエネルギー源とする従属栄養細菌ですが、硝化細菌の場合は、無機炭素(CO2)を炭素源にしてアンモニアを酸化する過程で生成するエネルギーを使う独立栄養細菌です。

脱窒工程は嫌気性反応

いっぽう脱窒工程は硝酸、亜硝酸を窒素ガスに還元する反応で、溶存酸素の代わりに亜硝酸や硝酸分子の酸素を使って有機物を炭酸ガスと水に酸化分解して、その結果、亜硝酸や硝酸から窒素ガスが作り出されます。この工程に関与する細菌を脱窒細菌と総称していますが、通常、活性汚泥中の従属栄養細菌の多くがこの能力を持っていて、溶存酸素のない嫌気性状態で脱窒活性が発揮されます。ですから脱窒反応が十分に進行するには、溶存酸素のない嫌気性雰囲気と亜硝酸、硝酸の酸素分子を還元するのに必要な有機物の存在が不可欠となります。

生物脱窒法の流れ

用語解説

従属栄養細菌・独立栄養細菌

従属栄養源細菌は、炭素源を有機物に依存している細菌で、独立栄養細菌は、炭素ガスを炭素栄養源としている細菌。

CHECK POINT!

  • 微生物に排水中のアンモニアを分解させるのが生物脱窒法です。
  • 生物脱窒反応は、硝化と脱窒の2つの工程で行われます。
KCRセンター池上徹

解説者

栗田工業株式会社
KCRセンター

池上徹

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№61の水処理教室では、「ウェルクリンC‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリンC‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№60の水処理教室では、「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№58の水処理教室では、「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

  • No.056 排水 排水その他

    汚染物質に応じた排水処理方法の選択

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№56の水処理教室では、「汚染物質に応じた排水処理方法」についてお話いたします。工場排水には油分や有機物、アンモニア、有害金属など、さまざまな汚染物質が含まれているため、複数の方法を組み合わせて処理することが必要になります。今回は汚染物質に応じた処理方法の概要について解説いたします。

  • No.053 排水 汚泥処理

    真空脱水機のしくみと利用法

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№53の水処理教室では、「真空脱水機」についてお話いたします。真空脱水機は、ドラム内部を真空ポンプで負圧にして脱水する装置です。けい藻土や炭酸カルシウム、石膏、その他鉄鋼スラッジなどの脱水しやすい汚泥を薬品注入なしで脱水することができます。その装置のしくみと利用法について解説いたします。

  • No.052 排水 汚泥処理

    汚泥をろ過室で加圧するフィルタープレス

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№52の水処理教室では、「フィルタープレス」についてお話いたします。フィルタープレスは、汚泥をろ過室に詰め込み加圧して脱水する装置で、脱水したケーキの含水率は低くなります。フィルタープレスには汚泥を加圧して送り続けて脱水するタイプと、ろ過室内のダイヤフラムが膨らんで脱水するタイプがあります。そのしくみについて解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

水処理教室(動画版)の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。