No.018

重金属を含んだ排水の処理方法

排水 凝集分離

栗田工業/KCRセンターの坂倉です。№18の水処理教室では、「重金属を含んだ排水の処理方法」についてお話いたします。工場排水に含まれる重金属は毒性が強いものが多く、微量であっても繰り返し摂取すると体内に蓄積されて中毒症状を起こします。そのため環境基本法では厳しい排水基準が適用されています。そこで今回は重金属の処理方法について解説します。

解説

これまで一般的な汚濁物質の分離方法を紹介しましたが、今回は排水中に存在する個別の無機物質の処理について見てみましょう。工場排水中に含まれる重金属は毒性が強いものが多く、それらは微量であっても繰り返し摂取すると体内に蓄積されて中毒症状を起こします。公害病として知られている水俣病は有機水銀毒、イタイイタイ病はカドミウムが原因です。そのため環境基本法では、有害物質と指定された重金属については、厳しい排水基準が適用されています。重金属は一般にアルカリ沈殿法、共沈法、硫化物法などの凝集沈殿法で処理されますが、そのほかにイオン交換樹脂法、膜分離法、酸化還元法、電気分解法などの処理法があります。

金属イオンを水酸化物にして沈殿させる

重金属処理でもっとも一般的に用いられるのがアルカリ沈殿法です。ほとんどの重金属が苛性ソーダや消石灰などのアルカリと反応し、水酸化物となって沈殿する原理を応用しています。この方法が最も広く採用されているのは、(1)最適pH、処理到達値の理論計算が容易、(2)pH計で薬注制御が可能、(3)使用薬品が安価でどこでも入手できる、などの理由によります。また他の金属が水中に同時に存在すると、処理対象重金属が理論上のpHより1~2低い領域から沈殿する(これを共沈現象と呼ぶ)場合があり、この現象を積極的に利用した処理方法が共沈法です。ここで用いられる共沈剤には、一般に鉄塩(塩化第二鉄、硫酸第一鉄)やアルミ塩(PAC、硫酸バンド)など毒性の低い金属が使用されます。さらに重金属を最も低い濃度にまで、処理できる方法が硫化物法で、中性領域での処理が可能です。硫黄化合物系の液体キレート剤(高分子重金属捕集剤)の開発によって、最近では適用例が多くなっています。

金属イオンの溶解度とpHの関係

用語解説

重金属

密度が比較的大きな金属で、一般的に4.0g/cm3以上のものを指す。

CHECK POINT!

  • 重金属の処理では、アルカリ沈殿法、共沈法、硫化物法など様々な方法が用いられます。
  • もっとも一般的なアルカリ沈殿法は、金属がアルカリと反応して水酸化物となる原理を利用します。
KCRセンター坂倉徹

解説者

栗田工業株式会社
KCRセンター

坂倉徹

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

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