No.051

遠心力を利用して分離する遠心脱水機

排水 汚泥処理

栗田工業/KCRセンターの若田です。№51の水処理教室では、「遠心力を利用して分離する遠心脱水機」についてお話いたします。液体中の固体成分を遠心力の作用で分離する装置を遠心沈降機といいます。この装置は重力の約10の2乗~10の5乗程度の遠心力を利用して分離するため、固体と液体が混ざった状態はもちろん、比重が異なる液体同士でも分離可能です。その装置のしくみを解説いたします。

解説

液体中にある固体成分の分離を、遠心力の作用で行うことを遠心分離と呼び、その目的のために使用する機械が遠心沈降機です。遠心沈降機は、重力の10の2乗~10の5乗倍程度の遠心力を利用して分離するため、固液系(固体と液体の混ざった状態)のみならず、密度差のある液液系(比重の違う液体が混ざった状態)の分離にも適しています。遠心沈降機の中でデカンター形と呼ばれる遠心脱水機が、水処理ではよく使用されます。この脱水機は、比較的濃度の高い懸濁液、あるいはスラリー(水と汚泥の混ざった状態)を固形物と清澄液に分離する場合に用いられます。

回転筒とスクリューの回転差で汚泥を搬送

汚泥は、遠心脱水機の回転軸部の供給管から回転筒内に供給されます。それと同時に凝集剤が供給管の汚泥入口部に注入され、回転筒内でフロックを形成します。この時に回転筒を高速(2000~6000rpm)で回転させると、遠心力(3000G程度)によって汚泥フロックが回転筒内壁に堆積します。この状態で回転筒内に設置されているスクリューが、回転筒とわずかな回転差で回転することで、汚泥フロックは排出口までゆっくりと水切りを行いながら運ばれて、脱水ケーキとなって排出されます。また分離された清澄液は、ケーキ排出口と反対側の清澄液流出口(ダム)からオーバーフローして排水されます。汚泥供給量が少ないか、あるいは汚泥濃度が低い場合は、ダムを浅くして運転し、多い場合はダムを深くして運転します。ダムが深いと分離水の清澄度はよくなりますが、ケーキの含水率は高くなります。またダムが浅いと、逆にケーキ含水率は低くなりますが、分離水の清澄度は悪くなってしまうため、その設定は汚泥の状態によって異なります。

遠心脱水機のしくみ

用語解説

デカンター

遠心力を利用して、水と固形物を分離するもの。

CHECK POINT!

  • 遠心沈降機は、遠心力の作用を利用して脱水します。
  • 回転筒と中のスクリューの回転差で脱水ケーキを運びます。
KCRセンター若田政己

解説者

栗田工業株式会社
KCRセンター

若田政己

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

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