水処理におけるヒドラジン利用と法規制・安全対策
ボイラ・スチーム 冷却水・冷凍機 一般事項2022年(令和4年)5月31日の労働安全衛生法改正により、ヒドラジンを含む有害性化学物質について、より厳格な管理基準や安全措置の遵守が義務付けられました。ここでは、水処理薬品に使用されるヒドラジンの特徴や用途、法律上の義務、安全対策について解説します。
ヒドラジンの特徴と用途
便利な化学的特性により、ボイラ・冷却水処理薬品に使用される
ヒドラジンは、脱酸素力が高い、揮発しやすい、微生物の繁殖を抑制するなどの特徴があります。この特徴を利用して、水処理では主に以下のような用途で使用されています。
1)ボイラ水処理薬品
給水中の溶存酸素量が多い場合、ボイラ本体や配管が腐食することがあります。この腐食を防ぐために、脱酸素剤の用途でヒドラジンが使用されています。
2)冷却水系薬品
冷却水系では微生物が繁殖しスライムを形成することがあります。スライムが熱交換器に付着すると熱伝導率が低下し、エネルギーロスが発生したり、散水板やストレーナーの閉塞によって運転停止につながるおそれがあります。こうしたスライムの抑制を目的としてヒドラジンがスライムコントロール剤として使用されています。
また、冷却水薬品と同様に、膜用水処理薬品にもスライムコントロール剤としてヒドラジンが使用されている製品があります。
人体への影響・危険性
ヒドラジンは便利な化学的特性を有する反面、発がん性、生殖毒性、神経系・肝臓・腎臓・血液への障害などの健康被害の危険性や、引火性や爆発性もあり、取り扱いに厳重な注意が必要な面もあります。
ヒドラジンの法規制と安全対策
労働安全衛生法で規定されている義務
ヒドラジンなど特定化学物質が配合されている薬品を取り扱う場合には、以下の対応が必要です。
1)化学物質管理者の選任
2)保護具着用管理責任者の選任
3)ばく露の程度を濃度基準値以下とすること
濃度基準値は特定化学物質ごとに規定されており、以下のサイトから確認できます。
また、ばく露を濃度基準値以下に低減するために講じた措置の状況等の記録の作成・保存も必要です。
4)皮膚等障害化学物質等への接触防止措置
※一部を抜粋して紹介しております。
その他の規制内容等については以下リンク先をご確認ください。
厚生労働省ホームページ「職場における新たな化学物質規制が導入されます」.pdf
安全性向上のためには、ヒドラジンを使わない水処理への移行が求められます
上記の管理義務は、事故リスクや健康被害の程度を最小限に抑えることを目的としています。そのため、万が一事故が発生した場合には、大量ばく露によって健康被害につながる危険性があります。よって、安全対策は以下の優先順位に基づいて検討する必要があります。
1)代替物質を使用する
ボイラ・冷却水処理薬品、膜用水処理薬品など、ヒドラジンを使用しない水処理薬品が開発されています。クリタはヒドラジンフリーの水処理薬品をラインナップしています。
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2)ばく露の程度を軽減する
・換気装置を設置
・作業方法の改善
・有効な呼吸用保護具の使用