ボイラで発生する『スケール障害』とは
ボイラ・スチームスケールとはボイラ水中の成分が鋼材表面に固形物として付着する現象をいいます。カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分がボイラ内に持ち込まれると、ボイラ水中では温度上昇による溶解度の低下と濃縮による濃度上昇によって不溶性の固形物が生じます。そして、その一部はスラッジとしてボイラ内に堆積、あるいはスケールとしてボイラ管内壁に付着(特に伝熱面では濃縮度が高くスケール化が促進)します。今回の水処理教室では、スケールの発生要因とスケール障害を防止するための対策について解説します。
スケールの発生要因
(1)軟水器の不調によるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの処理水への混入
特に多いのが樹脂再生に用いられる食塩の入れ忘れです。定期的なチェックをお薦めします。
また、原水の硬度成分増加や樹脂の劣化などが原因となります。
(2)シリカの過剰濃縮
薬品メーカーの薬品適用基準値を逸脱する運転をした場合にはシリカスケールが付着する可能性が高くなります。
(3)ドレン水や給水配管からの腐食生成物(鉄酸化物、銅酸化物)の持ち込み
(4)気系熱交換器からのスケール成分の混入
スケールはボイラの材質である鋼などに比べ、熱伝導率が極端に低いため、ボイラ燃焼室からボイラ水への熱伝導が阻害され、熱効率が悪くなり、エネルギーロスにつながります。また、蒸発管等の伝熱部のスケール付着部分が過熱されて、鋼の機械的強度が低下してしまい、蒸発管の割れや噴破による水もれに至ることがあります。
スケール付着による障害
(1)熱伝導率の低下による熱効率の低下
熱伝導率とは熱の伝わりやすさのことです。スケールが付着することで熱交換率が大きく低下し、多くの燃料が必要となり燃料費の大幅アップに繋がります。
■スケール付着による燃料使用量の増加率
(2)蒸発管材の過熱、ひどい時には、膨出・破裂も
スケール成分は熱伝導率が低い為、熱を伝えにくくスケール付着部分が局部的に過熱されます。過熱が継続することで鋼材の機械的強度が低下し、膨出・破裂が起こる可能性があります。
■スケール付着による管壁温度の上昇
スケール障害を防止するには
スケール成分を持ち込まない
・ 軟水器の管理
硬度指示薬を使用して人間が硬度リークの有無を確認します。または、硬度リークセンサーなどで硬度リークを常時監視します。
・ ドレン(復水)の水質管理
回収する復水に硬度成分の混入がないか、また、腐食生成物である鉄が多く含まれていないか水質分析します。
分析の結果によっては、復水の回収の停止やろ過処理を行う必要性があります。
入ったものは分散してボイラ外へ排出
・ 濃縮管理の最適化
濃縮管理の最適化を行い、ボイラ水中の硬度成分・シリカ・鉄の過剰濃縮の防止が必要です。
・ 薬注管理の最適化
薬注管理の最適化を行い、アルカリ濃度、スケール防止剤濃度の適正制御を行うことが必要です。
スケールが付着してしまった場合
スケール除去剤や酸洗浄剤などのスケールの厚さに合わせた薬品処理を行うことが必要です。
また、スケール除去機能を持つボイラ清缶剤を使用することも有効です。
「ドリームポリマー」はスケールを除去し、付着を防止するダブル効果を発揮します
クリタが独自に開発した「ドリームポリマー」は、スケールを除去するだけでなく、付着を防止することもできる画期的な多機能ポリマー素材です。
安定かつ着実な処理効果により、工場の省エネルギー、節水に貢献します。
詳しくはこちら> 「ドリームポリマー」がスケールを分散、除去し、省エネに貢献(省エネ大賞受賞)
CHECK POINT!
- 清缶剤、スケール防止剤を使用していても短時間の硬度リークなどによって、スケールが伝熱面に付着する場合があります。ボイラ効率の悪化や燃料使用量の増加、ボイラの管理温度や排ガス温度の上昇がないか確認しましょう。また、定期的にボイラの中を内視鏡観察することをおすすめします。
出典:ボイラの水処理【低圧ボイラ編】(栗田工業株式会社発行)
解説者
栗田工業株式会社
KCRセンター
梶原 瑛