No.028

含有物質で変わる排水の回収方法

排水 排水その他

栗田工業/KCRセンターの池上です。№28の水処理教室では、「含有物質で変わる排水の回収方法」についてお話いたします。排水の回収方法は含有物質によって変わります。たとえば無機イオンが多く含まれている場合、利用される技術はRO膜[逆浸透膜]回収方式とイオン交換樹脂回収方式が主体となります。この2つの処理方法について解説いたします。

解説

排水の回収では、その中に何が含まれているかによってその方式が変わってきます。たとえば無機イオンが主体の場合、利用される技術は活性炭とRO膜[逆浸透膜]を組み合わせた回収方式と、活性炭とイオン交換樹脂を用いた回収方式が主体となります。このうちRO膜[逆浸透膜]回収方式を利用するのは、排水中の無機イオン濃度が電気伝導率で500μS/cm以下の場合です。組み合わせて使用する活性炭は、共存する過酸化水素の分解や界面活性剤など有機物の吸着除去を行い、RO処理の保護(膜の劣化と汚染の防止)と有機物濃度の低減を行います。またイオン交換樹脂回収方式はRO膜[逆浸透膜]処理では膜の劣化が予想される場合や、やや塩類濃度の高い電気伝導率1000μS/cm以下が対象となります。

有機物を含んでいる場合の処理方法

ところで排水中に有機物を含有する場合、とくにイソプロピルアルコールやメタノールなどの低分子有機物の除去には、こうした方法以外に生物処理が有効となります。微生物は有機物を栄養として取り込み、増殖します。これが懸濁物質として処理水中に流出してしまいますので、その生物を取り除くために膜ろ過装置を設置します。この生物処理によって、1mg/LのTOC(全有機炭素)が1/10の0.1mg/Lまで分解除去され、この後に残留した有機物と無機イオンをRO膜[逆浸透膜]で取り除きます。こうした排水の回収は近年、液晶パネル製造工場で盛んに行われています。ここで使用する純水と超純水の量は、半導体製造工場の10倍以上にもなります。ただ、要求される水質は必ずしも超高純度というわけではなく、半導体製造工場であれば処理後に放流する排水も、液晶パネル製造工場では回収・再利用されています。

含有物質による回収方法の使い分け

用語解説

脱塩

水の中に溶解している無機物質(塩類)を除去すること。

CHECK POINT!

  • 排水の回収は、含まれる物質によって方式が変わります。
  • 排水の回収は、液晶パネル製造工場で盛んに行われています。
KCRセンター池上徹

解説者

栗田工業株式会社
KCRセンター

池上徹

出典:よくわかる水処理技術(株式会社日本実業出版社発行)

水処理教室バックナンバー

同じカテゴリの記事をご覧いただけます。

  • No.061 排水 凝集分離

    難分解性シアン錯塩の凝集処理

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№61の水処理教室では、「ウェルクリンC‐200」を使用したシアンの処理方法についてお話いたします。シアン(CN)を含む排水は、メッキ工程から排出される排水と、鉄鋼工場のコークス製造排水に代表される炉内の化学反応で合成される排水の2種類に大別されます。前者はシアン化ナトリウム及び、鉄・亜鉛・ニッケル・銅・金・銀などの金属シアノ錯体が含まれ、後者は有機物や反応中間体を含みます。これら、幅広いシアン化合物を処理することが可能な「ウェルクリンC‐200」を使用したシアンの処理方法について解説いたします。

  • No.060 排水 凝集分離 排水その他

    置換法による重金属錯体の処理

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№60の水処理教室では、「置換法による重金属錯体の処理」についてお話いたします。排水中に含まれる重金属が他の種類の化合物と結合している状態を錯体といいます。その錯体の中でもキレートという安定した形を形成している場合は置換法を用います。その置換法や、その他の処理方法について解説いたします。

  • No.058 排水 生物処理

    沈殿槽を省いた生物膜式活性汚泥法

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№58の水処理教室では、「生物膜式活性汚泥法」についてお話いたします。生物膜式活性汚泥法は、充填材に微生物を付着させる処理方法です。沈殿槽の小型化、もしくは省略により、排水処理設備の省スペース化が可能です。この方法には固定床方式と流動床方式があります。それぞれのしくみを解説いたします。

  • No.056 排水 排水その他

    汚染物質に応じた排水処理方法の選択

    栗田工業/KCRセンターの池上です。№56の水処理教室では、「汚染物質に応じた排水処理方法」についてお話いたします。工場排水には油分や有機物、アンモニア、有害金属など、さまざまな汚染物質が含まれているため、複数の方法を組み合わせて処理することが必要になります。今回は汚染物質に応じた処理方法の概要について解説いたします。

  • No.053 排水 汚泥処理

    真空脱水機のしくみと利用法

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№53の水処理教室では、「真空脱水機」についてお話いたします。真空脱水機は、ドラム内部を真空ポンプで負圧にして脱水する装置です。けい藻土や炭酸カルシウム、石膏、その他鉄鋼スラッジなどの脱水しやすい汚泥を薬品注入なしで脱水することができます。その装置のしくみと利用法について解説いたします。

  • No.052 排水 汚泥処理

    汚泥をろ過室で加圧するフィルタープレス

    栗田工業/KCRセンターの若田です。№52の水処理教室では、「フィルタープレス」についてお話いたします。フィルタープレスは、汚泥をろ過室に詰め込み加圧して脱水する装置で、脱水したケーキの含水率は低くなります。フィルタープレスには汚泥を加圧して送り続けて脱水するタイプと、ろ過室内のダイヤフラムが膨らんで脱水するタイプがあります。そのしくみについて解説いたします。

ログイン・ユーザー登録

水処理教室(動画版)の閲覧や製品カタログのダウンロードを
ご希望の方は、ログインまたはユーザー登録を行ってください。

WEBからのお問い合わせ

水処理に関するご相談やKCRセンターに関する
ご質問など、こちらからお気軽にお寄せください。